私達はただ立ち尽くすしかなかった。誰もいなくなったドルトムントの
スタジアムに広がる緑のフィールドを見つめながら。
負けた事が悔しいのでもない、日本代表に腹が立つでもない。空虚感が
自分の身体を支配していた。脱力したとでも言っていいのかも知れない。
ただし、そこには悲しいという感情がどこにもなかった。自分の視線の
先には
ブラジルゴール裏で歓喜する場面を見たからなのか。
これでドイツ最後の試合を見たという満足感がどこかにあったからなのか。

この日得点した玉田。
それはどちらも違う。この試合が終わった時、
私は60年前の日本と変わっていない映像が頭の中に飛び込んできた。

引退を表明している中田英寿。
自由を掲げ「黄金の中盤」とマスコミが大々的に取り上げた
海外組の中盤を中心とした新しい船出。
それまでトルシエ監督に抑圧されて指導されていた日本代表を、
ジーコは精神的に解放し、自由を掲げ世界に羽ばたかせる。

今大会一番の失望に終わったロナウジーニョ
ジーコの率いてきた4年間は、あの1941年からの4年間と重なって仕方ない。
ジーコ監督としての最初のジャマイカ戦。得点シーンは、小野伸二が
裏のスペースを「奇襲」するかの如く、ジャマイカゴールを爆撃。
結果的に引き分けに終わってしまったのだが、このシーンだけを
マスコミ各社は強調し、ジーコの監督としての"神格化"を進めた。

前後半通して奮闘した加地
その後もジーコ監督の率いる日本代表は大きな
インパクトを与える事はないが、
マスコミは例えば敗戦でも1点でも取れば、それが敗戦以上に収穫を
したかの様に報道し、度々散見されてきた問題点をひたかくしにしてきた。
また驚くべきことに、"神"ジーコ監督の神通力は、
サポーターからの
高まる解任の声を掻き消す様に、要所要所で日本代表を勝利に導いた。
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