彼が
横浜を離れるリリースが出たが、誰も驚かなかったに違いない。
「自分には緑の血が流れている」と言ったとか言っていないとか。
そういう選手が、断腸の思いで
ヴェルディを一時的に離れ、
武者修行の為に横浜に来たのを知っていたからだ。正直、横浜の
Playerというより、横浜へのVisitorという雰囲気があった。
でも、横浜の
サポーターはそれでも彼を受け入れた。
チームの状況がその位逼迫していたからだ。

4-1-4-1で臨んだ
シーズンだったが、構想にあった久保は故障を抱えて
5月に戦線離脱をしてしまう。また、彼とはタイプが異なる選手は
難波やシウバらがいたが、高木監督の求める「1」のオプションで
しかなく、核になるべき選手が必要だった。
緑の血を持つ者が横浜にやってくる。私はあるシーンを思い浮かべて
いた。「V」というテレビドラマがあったのをご存知だろうか。
地球に人の姿をした宇宙人がやってきて、地球人を食料にしようとする
1984年に大ヒットしたテレビドラマである。このドラマで、初めて
宇宙人が地球にやってきた時、アメリカの上空に大きな円盤が浮かび、
人々は皆この先どうなるのか不安と好奇の思いで眺めていたシーン。
緑の高いプライドを持った選手が、横浜の守備的な戦術に馴染むのか、
皆歓迎はしたが彼が登場するまでは、複雑な気持ちだった。
しかし、その不安を彼はプレーで吹き飛ばす。合流したばかりで
全くチームにフィットしていない中で途中出場した大宮戦だったが、
後半からその最大の武器であるドリブルで単騎敵陣で勝負を仕掛けた。
孤立無援だったが、可能性を感じた。

翌週の三ツ沢では得点にこそ絡まなかったが、前線から守備も頑張り
勝利に貢献。その次のガンバ戦こそ敗れはしたが、PKを決めて
FWとして一息入った形だった。
そして、磐田戦。開始早々に日本代表GK・川口の頭を抜く技ありの
ループシュートを決めて、剛ばかりではない器用な一面も見せた。
久保の代役どころか、新エースが生まれると誰もが感じ始めていた。
ところが、この試合で逆転負けを喫してしまった影響が彼にも波及
したのだろうか、そこから全く歯車がかみ合わなくなった。
新潟戦、柏戦、千葉戦と大きな見せ場もなく敗戦。
長期間の合宿から明けて戦った横浜ダービーは散々なものだった。
菅野のミスによる失点から始まり計8失点。熱狂的な横浜FCサポでも
試合の途中で家路に付きたくなる試合だった。
だからこそ、この試合相手のミスから1点返した平本の心中を
察したくなる。きっと彼はきっとこう思っていたに違いない。
「こんなはずじゃない。」
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