"上カルビ""豚ナンコツ""チーズタン""コブクロ"
結構母親は満腹らしいので、これらが最後の注文にしようと思っていた。
でも時刻はまだ6時過ぎ。ヨンデは来る気配がない。
続いて「豚ナンコツ(下)」を食べる。小さい頃に名古屋駅近くの焼肉屋で初めて食べてからすっかりとりこになった「軟骨」。今でも一人暮らしの自分は近くのスーパーで軟骨を買ってきては、軟骨を炒め黒胡椒を振り、ねぎを刻んで、卵を落として「軟骨丼」なるものを食べていたりする。
さてこのナンコツはどうか。塩ではない。独特の味の濃いタレが最初から絡めてある。
これがいいじゃないか!焼いて熱くなった肉を程よく包んでくれるこのタレは、
口に運べば噛んで染み出す肉汁と交じり合い、絶妙のハーモニーを奏でる。
実家で両親がハーモニーを奏でた事は一度もない気がするとは言わなかったが、
それは父親以外の家族はみんな理解していることでもある。
母親はいい知らせでもあると期待していたのだろうか。「チェッ」と僕に聞こえる様に残念がる。逆に母親に聞いてみると「できそうでできないねぇ」と笑っておどける。
最後はとまとオリジナルの「チーズタン」。タンの上に海苔とチーズが乗せてある。
しかし、意外に焼くのが難しい。裏返してしまうとチーズが溶けてしまうので、
慎重に焼くが、肉が反ってしまって勝手にチーズが落ちる。難しい。
そこそこ慣れたので母親に勧めるが、もう満腹なのか一人で食べろという。
でも「中々来られない店なので、1つ位食べて」と頼むと、
「老いては子に従え。って誰かにも聞かせてやりたいね」と1つだけ。
「今まで家の事を何も考えていなかった人だからねぇ。」と母親。
今の実家は僕が掃除をしてもしきれないレベルで汚れている。風呂とトイレの
電気が付かなくても「俺一人が住むんだからいいだろ?」と逆ギレしてくる始末。
親心のわからない年ではない。でも、それだけでは実家に帰れないんだ。
家族を迎えるにはあまりにも親父は実家を放置しすぎた。雨漏りしている
台所も直さない。家族の意見にも昔から耳を貸さなかった。だから子供も実家に
帰る気持ちは殆どないし、そういう事情を母親は一番理解している。
綺麗だから帰る訳でもないし、近いから宿泊費を浮かす為に帰る訳でもない。
だからといって全く掃除する気がないという事でもない。
そういう子供の心を理解してくれない父親の元では帰省って関心ないんだ。
実家に帰らないという事は、家族の距離的な崩壊だけでなく、
精神的な崩壊も意味していると思っている。チーズタンのサッパリしつつ
そのチーズのドロッとした感触は、今の実家に関わる家族の気持ちを代弁
しているみたいだった。ただ違うのは、このチーズタンは美味しかった事だ。
是非食べることをお勧めする。
ここでトイレに立って、戻ってくると母親は帰り支度をしていた。
というのも終電が危ないらしい。仕方ない。まだ6時30分だが。
「僕が払っておくからいいよ」と送り出そうとすると、「もうお金は
そこに出したから」と、僕のデジカメのケースに折りたたんでおいてある。
"やられた"そんな気持ちだった。だったからせめて帰り道がわからないと
言っていたので、この店から大江駅までのタクシー代、漱石数人分を渡す。
この時母は「何だかんだ言っても一番成長したのは長男だね」と
それを受け取った。タクシー代はそんなにしないけど、自分の
ある意味興味本位で来た食事に付き合せて悪いなってあったから。
母親を見送って、一人30分も何しようか。。。ヨンデ〜〜



