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2006年02月28日

マイナースポーツの悲哀

トリノ五輪を終えて多くの選手が成田に戻ってくる。
冬の祭典に幕が降りたとでも言うべきだろうか。

ただ、メダルの数や成績面には課題が残り、今後の強化策の
見直しは早急にしなくてはならない。
スノーボードはその槍玉に挙げられた一つだ。
全員がメダル候補と言いながらも、実際は男子は全員予選落ち、
女子でも9位が最高と、男女合わせて8人も派遣した効果はまるでなかった。

それよりも、強化策の中身は今後の検討課題だ。

この五輪は、成績の低迷と相まってか選手の引退が、幾度も聞かれた大会となった。
「次の世代を」「やれる事はやりました」「続けるかはわからない」
ネガティブな発言ばかりだった。もちろん自分の肉体や精神の限界は、
選手自身にしかわからない。それを取り上げて非難するのは、あまり意味がない。

ただ、スピードスケートの牛山選手の様に24歳の若さで引退をほのめかした例もあり、
引退の原因は単なる肉体の衰えややるだけの事はやったという"達成感"だけでは
ないと思われる。

カーリング女子代表の小野寺・林の両選手も、今後について言葉を濁した。
カーリングは競技人口2500人という小さなスポーツな事に加えて、
専用のリンクは全国で9つしか存在しない。

加えて、彼女らの生活は過酷だ。普段は仕事をしながら、競技をするにも
遠征代もほぼ自腹であり、日々の練習もリンクも少なければ、
指導者・協力者も常駐している訳ではない。
ソルトレーク五輪の後に常呂町に戻っても就職先が無かった様に、
地方の雇用は厳しい上に首都圏に比べればずっと低賃金な場合も多い。
こういう悪環境の中で4年間を駆け抜けるのは、精神的にも金銭面でも厳しく、
トリノ出場が決まっても、彼女らには合宿を組むまでの予算はなかった。
町の人が工面してどうにか1000万を集め直前のカナダ合宿にこぎつけたに過ぎない。
こうして成り立っている冬の五輪の選手の生活は、過酷だ。

カーリングを例に出したが、これは稀有な例ではない。金メダルを獲得した
荒川静香選手が出場したフィギュアでも、彼女の仙台時代に滑っていたリンクは
閉鎖になっていたり、村主らが練習で使う新横浜のスケート場も人が多く、
トッププレーヤーが演技を滑走できる場所はない。
選手個人では恵まれている競技でも、競技自体は厳しい運営を迫られている所が多い。

今まで選手個人にお金を出してきたJOCは今後の強化の方針を再考すべき時が
来ていると思う。アマチュアですら競技をできる環境がなく、そのスポーツから
離れていくのは、そのスポーツの衰退に繋がっていく。

スピードスケート4位の及川は大学卒業後、スケートをやる環境がなく
就職先の会社でスケートで五輪に出場すると宣言して入社したり、
ボブスレー・スケルトンの越はスポンサー回りで練習以外の時間を埋めている。
カーリングの解説をした小林氏は自分の私財でリンクを作ったとも聞く。

ここまでアマチュアがやらないと存続できないスポーツとは何なのか。
そのスポーツを束ねているJOCや文部科学省は何をやっていたのか。

日本は冬季五輪で上位に食い込む国に比べれば、雪が降る部分は限定的かも知れない。
しかし、世界と比べて劣るというならまだしも、世界に出ても上位に入る力が
ある選手であっても、常に「引退」という二文字と戦わざるを得ない状態。
原因も競技力の低下ではなく、金銭面やそれを工面しなくてはならないという
精神的な疲れが原因では悔しい。

その彼らは本当に健気だ。五輪で上位を目指す理由は、個人の注目度でもなく
賞金でもなく「この競技を知ってもらう為」と答える。
スノボクロスの藤森は試合後7位入賞に終わった事に、
「この競技をメダルを取ってもっと知ってもらいたかったのに残念。」とこぼす。
そのマイナーな競技の選手の思いをJOCはどれだけ理解しているのか。

強化の見直しは結構。しかし、その競技がどうして良かったのか、ダメだったのか
上っ面に成績面だけの追及をすれば、敷居の高さに殆どの競技で止めていく人が
増えるだろう。

要するに今後は個人の報奨も大切だが、様々な競技自体の普及に
何ができるのか考えるべきではないのだろうか。


選手が練習する場所すらない競技で好成績を挙げることは奇跡と言っていい。
場所だけではないのかもしれない。用具も高価なものもあるだろう。
そういうソフト以前のハードな面をもう一度見つめなおさなければ、
次の五輪どころかそのまま競技がなくなってしまう事もあり得る。

トリノ五輪は"Passion lives here"(情熱はここに)だったが、
この日本の現状は"Poison lives here"と言っても過言ではない。
競技者の最大の敵は、この国内にいる。
posted by おかき at 12:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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