2006年07月29日

「タイヨウのうた」

人生において、自分が一線を越えた事はあるのだろうか。
ふと、そんな思いが湧いてきた。

雨音薫(YUI)は、太陽の紫外線に晒されてしまうと、死に至る
XPという病気を煩っている。この病気のお陰で彼女は太陽が沈むまで
家から出る事はできなかった。学校も行けなければ、遊びにも行けない。
そんな彼女に出来る事は歌を歌う事。
真夜中にロウソクの灯りなら薫の姿も心も映し出す事ができた。その歌に乗せて。

暗闇の中をぼんやりと生きてきた薫の心を動かすものが現れる。
それは藤代孝治(塚本高史)との出会い。彼女の声が人の心の琴線に
触れる様に、孝治との出会いは彼女のそれを激しくかき鳴らした。


孝治との出会いは薫の生活を変えていく。暗闇から恐る恐るでも
光の射す方に足を踏み出す。その境を越えようとする。
彼にその手を引かれて横浜に行って、新しい世界を垣間見て、
歌う喜び、楽しみを薫は知る事になる。そして、孝治からの愛の告白。

しかし、その引き換えに彼女は自分の病の告白をしなければならなくなる。
踏み出した足を暗闇に引き戻す、また昔の自分に戻りかけたその時、
薫の歌に心惹かれた孝治の純粋な思いが、彼女を連れ戻す。

線路の踏み切りでのキス。あのシーンがこの映画の象徴になる部分。
夜しか外に出られない薫、まっすぐで太陽のような孝治。
その二人がレールの真ん中で寄り添いあう。
暗闇に潜んで自分の運命を呪いつつ、何もしない自分ではなくて、
足を前に運ばせる勇気、その一線を越えると自分の身をも
滅ぼしてしまうかもしれない、でもその人といるという決意を決めるシーン。
孝治も人を好きになるという事は、その相手の全てを知って
守ってやるという大切な思いに気がついた。

その二人とは裏腹に運命は残酷な結末を描き始める。
薫のXPが進行し始める。もうギターを弾けなくなった左手。
薫は自分の運命を覚悟しつつも、その限られた運命の中で「生きていく」。
前向きな気持ちを彼女は見つけたのだから。

彼女は孝治に勧められて自分のCDを作る為に歌を歌う。
もう自分の長くない命とこの声を永遠に残しておく為に。
レコーディングブースのランプがまるで、病院の手術中の灯りに見える。

最後の輝きを全て歌に吹き込んで・・・彼女は。。。
薫は一線を越えて空に行ってしまった。

でも、これで終わった訳ではない。
あれが薫が短い人生の中で初めてのスタートラインだったから。
posted by おかき at 02:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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