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2006年12月03日

2006年J2第52節 横浜FC-愛媛FC 「決別」

選手の入場と共に、空に放たれる1万個の青い風船。それを見て、
観客達は「凄い」「キレイ」と口にする。
しかし、この光景がこのクラブに携わった人間の魂つまりは思いを乗せて
「上に」向かって飛んでいくと私は思った。
バックスタンドに貼られたこのクラブに所属した選手やスタッフの名前が
書かれた幕と天に上がっていく風船。私達は歴史の1ページを開いたのだと。





最終戦というのはいつも不思議な空気が流れる。J2の場合、最終戦が
契約非更新の選手が発表された後に行われる事が多く、まるでこれから
遠距離恋愛になってしまうカップルの駅のプラットホームでの見送りの
場みたく、女性サポーターはその瞳をうるうるさせて見ているに違いない。





今年は横浜から旅立つ巨星・城がそのピッチにいた。城は試合前から
選手一人一人と抱き合い、名残り惜しさを感じているというより、
最後のプレーを楽しみたいという笑顔に溢れたシーンであった。



城の現役引退のカウントダウン残り90分が今始まる。

試合はお互いのやりたいところとやらせないところがしっかりぶつかった。横浜は前半から山口が中盤で信じられない位のカットを見せる。コースの切り方、追い込み方、スペースの埋め方。守備面では、相手FWに殆ど仕事をさせなかった。スピードのある愛媛・江後にもしっかりと身体を寄せて対処。愛媛・田中には早川がしっかり付いて、ここでボールを自由にさせない。



反面攻撃は全体的に停滞しがちで、前半中頃を過ぎるまで前線まで運べない。カズは前半で足を痛め交代。この内容を見ていると、本当に前半で昇格を決めて助かったと思えてしまう。



後半、やり方を整理しアレモンへのボールを増やした事で横浜が徐々に流れを掴み始める。これは、もう定番の横浜のやり方。



この日前線に顔を出したがっていたヨンデにソンヨンからのクロス。これをボレーシュートの様な姿勢で、ゴールに流し込み横浜が先制。愛媛はこれで少しエンジンがかかり前傾気味に。特に左サイドの"ミノルーニー"こと菅沼実が、横浜右サイドを支配。彼が内に切れ込んでシュート、中に捌く、サイドをえぐる。一人で決定的な仕事を何度もしたが得点にはつながらず、逆に横浜の攻撃。





左サイドに流れた城から、PA内裏に飛び込んだアレモンにクロス。
これをアレモンがフリーで決めて横浜が追加点。そして試合を決めた。最終戦を勝利で、しかも完封で勝利を迎えた。



その相手が愛媛というところも感慨深い。今からたった9ヶ月前の開幕戦。愛媛・猿田にハーフウェイラインから独走で突破を許し、決勝ゴールを決められての敗戦。J2昇格初年度の愛媛に敗れた事よりも、内容の酷さに唖然。そして間髪入れずに足達監督が解任。最初に敗れてから今年の横浜の物語は始まった。その敗れた借りを最後は勝利でしっかり返した。これで心置きなく昇格できる。

フィールドでは、北村が泣いていた。6年もこのクラブにいた。試合に出られなくても、いつでも応援してくれる人間が沢山いた。2点差になってから起用され、幾度か突破するシーンもチャンスもあった。だからこそ、誰もが点を取らせてやりたかったと思っていた。あの冷静な高木監督ですら
「キタだけではないが、今日の試合に関わっている選手でいうとキタは特別な選手(契約非更新選手)だったので、花を持たせてやりたかった」と述べていた。その思いは他の選手も感じていたのだろう。最後は選手達が北村を胴上げする姿もあった。

そして誰もが感じていたのは、城への思い。最早元日本代表ではなく、今や横浜が抱える唯一無二の横浜代表キャプテン・城。この日彼はどんな時も笑顔が絶える事はなかった。試合中でも笑顔、もちろん終わっても笑顔。サッカーを満喫した。楽しんだ。そんな、思い出を作った最後の場所が三ツ沢になった。彼との思い出はありすぎた。

でも、もう彼は来年の春この場所にはいない。現実に戦いへの足音は聞こえてくる。城の言葉を借りるならば、「格上との対戦が始まる」。今年は至福の時を迎える事ができたが、来年はこうはいかないだろう。

城の引退、北村の解雇、私達はいつか彼らと決別をしなくてはならない時があり、それが今年だっただけなのかも知れない。フランスに私達を導いた城が、このクラブを昇格に導いて引退する。彼はまた歴史を一つ最後に作っていった。

惨めだった過去との決別、悲しい思い出との決別、そしてJ2との決別。その思い出全てを心に刻んで、新しい未来に足を踏み出す。夢を果たせなかった全ての者達の思いも背負って。
posted by おかき at 03:23| Comment(0) | TrackBack(2) | 横浜FC2006観戦記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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