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2020年09月02日

2020年J1第13節 横浜FC-セレッソ大阪「一つの物語が終わり、また始まる」

それは突然の報だった。イバの大宮への完全移籍。ただ今シーズン出場機会が限られそうな予感は既にあった。昇格した昨年の終盤も京都戦での敗戦以降はスタメンから外れてしまった。今シーズンも2月の開幕戦も一美が1トップに入った。Jリーグが再開された7月以降も彼の出場機会は限られていた。リーグ戦では唯一出場したアウェイでのガンバ大阪戦で与えられた時間は3分。ルヴァンカップの出場時間を含めても90分にも満たない。そういう意味で、突然ではあったが意外ではなかった。

その大黒柱の移籍には多くの嘆きと悲しみの声で埋まった。まだやれる。そうサポーターが思う以上に彼自身もそう思っているから出場機会を求めて、移籍を選んだのだろう。引退や戦力外通告ともまた違う辛さがある。それでも時は止まらない、チームは動き続ける、選手も動き続ける。そうした喜怒哀楽を一杯抱えて歴史は紡がれていく。



セレッソ大阪というよりも対ロティーナ戦、横浜はヴェルディ時代から未だ勝利なし。策士の術中に嵌ってしまっているかのようだ。この試合も序盤は横浜に勢いがあったが、次第にセレッソに縦パスを通されるようになると苦戦。まず大きな誤算だったのは志知。左利きの彼が右サイドバックでどう戦うか期待していたが、左利きの選手が左足でボールを運ぶということは対面する相手の前にボールを置くことになる。だからどうしてもここで一呼吸いれてしまって、サイドを広く使いたいのにスピードダウンして、ブロックを作られて、袋小路にという展開が何度もあった。



さながら前週水曜日に鹿島の4-4-2と対峙した時とはまるで逆に、横浜はハーフスペースを消されて、ボールは動くが人が適切な位置にポジションを取れていないから、セレッソの守備の外を回るばかりになってしまった。いつかのハマナチオではないが、2ブロックがスルスルスライドして穴が中々生まれない。
近くにいた客は、「パスを回しているばかりで面白くない。」「長いのドーンと入れて、バーンと決めたらいい」と言いたい放題だったが、その思いを実現させたのはセレッソだった。



前半14分、ブロックの間を通された縦パスを高木にフリックで落とされて、飛び出してきた清武に守備陣も交わされてアッという間にゴールを決められた。鹿島戦でもそうだったが、同じ様な形の場合はどこでギャップやスペースを作るかということが課題で、この試合ではセレッソに面白い様にボールを通されてしまっていた。後半11分の失点も、右サイドを清武に侵入され、守備陣を引き付けられてしまい、こぼれ球を奥埜がブルーノメンデスにパスした時点で勝負ああり。2点目を許してしまった。

どちらも清武だけが称賛されているが、この3人目の動きに再現性があるからセレッソは堅実に強い。再現性とは一種の形。こういう時は、ここにボールを出せば、誰かが抜けてくれる。誰かが待っているというクオリティが高い。
守備になると基本を徹底させるかの様な守備で、慌てず騒がずブロック、ディレイ、スライドが徹底されていて、横浜はチャンスらしいチャンスを作れない。

それでも横浜に徐々に好機が訪れ始めた。セレッソ大阪の攻撃の核である清武を下げて柿谷戸倉を入れ始めた辺りからだ。それまでは清武が気の利いたポジショニングで味方と味方を繋いでいたが、今度は前線にパワーのある2人を置いてからはそれまでの滑らかなサッカーがやや雑なものになった。それと残り時間15分で2点差という一種の安全な状態で攻撃を受けてくれたことが横浜がチャンスを生み出すきっかけになった。



再現性という意味では、横浜は松尾だけが機能していた。後半41分袴田が退き左サイドに回った志知が浮かせたボールを、斉藤光毅が胸トラップで落としたところに、走り込んでいた松尾がワントラップして右足を一閃。セレッソゴールを射抜いた。似たようなプレーが、後半33分もあって、一美が浮かせたボールに斉藤光毅が合わせるが合わず、こぼれ球を狙って追いかけていた松尾が最終的にシュートを放つシーンを再現したようなもの。松尾は終盤になって志知が高い位置を取るとより高い前線に入っていき、この三人目の動きを意識している部分。チームとしてデザインされたプレーではないが、この瞬間的な判断があるからこそゴールを生み出せる。これで4試合で4ゴール。横浜だけでなく、Jリーグで最もノッてる選手の一人になった。

試合はそのまま1-2で敗戦。ロティーナにまたしても勝てなかった。クオリティの差はあった。特に前半から後半頭位までは、絶望的に何もできなかったと言える。それでもゴールが生まれ、その後の「もう1点」という期待感は生まれた。チームが苦しい時にそれを助けるゴールを決めるのはストライカーの役目。



イバの移籍で悲嘆に暮れてばかりはいられない。ストライカーはいつの時代も出てきては去り、そしてまた現れる。イバは、大宮に移籍して「New Chapter」と投稿した。つまり新章。イバは自身の新章を歩みだした。横浜はどうか。この試合こそ敗れたが、3連勝を記録。若い選手が躍動し始めている。アカデミー出身の選手も増えてきた。松尾のゴールは新時代の旗手を見つけた気がしてならない。イバとの前章はもう閉じられたが、その物語は消えない。語られた1ページ1ページはこの胸に残る。そのページに滲む思いを抱えて、また次のページをめくる。横浜はまた新しい歴史を作る。
posted by おかき at 21:00| Comment(0) | 横浜FC2020観戦記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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