甲子園の魅力の一つにトーナメントが挙げられる。全国各地から
4000近い参加校がある中で、その夏一回も負けなかった高校が
夏のチャンピオンになる。その一戦にかける思いはリーグ戦よりも
遥かに重くなる。負ければ、その時点で彼らの夏は終わるのだから。

チョナン スポーツコンプレックス

ガーナ代表の練習風景
また高校生の大会であることも魅力の一つだろう。男子においては
精神のまだ成長途上にある高校生の時期の試合は、波乱も多く
ドラマチックな展開になるケースが他と比べて多い。
終盤の逆転劇、一つのミスからの大量失点、勢いに乗って勝ち上がる
高校、高校生のトーナメントだからこそ起こりうる要因である。


U-17ワールドカップに出場している選手は、海外の選手を始め
肉体的に大人と見栄えこそ変わらないが、精神的には甲子園に出場
している高校生と大きく変わる事はない。
ガーナ代表とドイツ代表の一戦も高校生同士の白熱した戦いになった。

この試合ガーナ代表側で見ていたからそうのなか、ガーナ代表への
声援が大きい。特に緒戦のトリニダード・トバゴ戦で2得点を挙げた
#10オセイへの声援は大きかった。
だが、前半オセイにボールがほとんど渡る事はなかった。
ドイツにプレスにボールを奪われてサイドに展開され防戦一方となり、
前半5分には中央を飛び出されて#20ビガルケにゴールを決められる。
CBのポジションが曖昧でその間隙を突かれた。

ドイツの攻勢は止まない。#9スクタ-パスのポストプレーが
面白いように嵌りドイツは悠々とプレーしている。
前線で彼がボールをコントロールして、サイドに散らす、
中盤の#10クロースが捌いて散らす。
12分にはそのクロースがFKを直接叩き込みドイツ代表が2-0と
リードする。本当にこの先何点取るのだろうと思ってしまった。

2点を早い段階で得点したので、ドイツがプレスを緩めガーナも
攻撃する時間が増えたのだが、逆にその攻撃を嘲笑うかの様に
ドイツはクロースがこの日2点目となるゴールを決めて、3-0。
天安の人々もガーナのコールをしなくなる位、ドイツの強さが
際立った前半だった。ガーナはシュートに精度がなかった。


ところがである。このゲームは後半に面白くなる。
前半終了間際にスクタ-パスが怪我で下がったドイツはボールを
上手く支配できなくなる。そして3点差という開いた点差が
余裕という名前の悪魔を召還してしまう。


ガーナは後半7分に右サイド#7クアンサが右サイドを4人抜きで
ゴールに迫り、最後はスルーパスで勝負あり。オセイがそれを
流し込んで1点を返す。その直後の8分には#4オパレの右からの
クロスに#9アダムスが角度のないところに右足インサイドで
合わせて左隅に転がして遂に1点差に。
たった2分で2点を失ったドイツはここから立て直せないまま混乱。
若さとはこういう事を言うのだと、齢を重ねたから言える。

後半は完全にガーナペースになった。裏に飛び出してくる
オセイ、アダムスの2トップを押さえきれずピンチの連続。

そして追い討ちをかける様に38分DF#5ラウシュが退場。プレーと
関係なく、怪我で退場して戻った直後のイエローカードだったので
無許可進入だと思われる。理由はともかくドイツは絶体絶命の
ピンチを迎える。守勢の中で数的不利。

運命の後半ロスタイム。ガーナにFKが与えられる。キッカーは
後半から出場の#19アルハッサン。彼の蹴ったボールは美しい弧を
描き、GKも反応できないコースに飛んだがゴールバーに嫌われ
跳ね返りもクリアされ主審のタイムアップを告げる笛。
2-3でドイツ代表が何とかガーナ代表を振り切った。

ガーナ代表はA代表と変わらず身体的能力の高さを見せ、
一方ドイツ代表は組織化されたプレーが出来るレベルの高さが
感じられた。そして、もう一つは彼らの若さだ。
まだ年端も行かない子ども達は大量得点差で緩み、あるいは
1点を入れると勢いを取り戻し、そしてその勢いを立て直せない
ままゲームが進行していくという、甲子園さながらのゲームだった。

ワールドカップであっても出場している選手の多くは高校生。
サッカーの甲子園とでも呼ぶべき大会がワールドカップである。
今年の夏、サッカー小僧の青春の舞台は韓国にある。



