揺られてホテルに帰るバスも見送ってからスタジアムを後にする。
スタジアムの照明は試合の余韻を断ち切る様に、漸次消され
最後のバスを見送った時には、休憩所の自販機の灯りだけだった。
時計を見るともう夜10時。トリニダードの様な危険な空気は感じ
なかったが、初めての場所で地理感覚がないので長居もしていられ
なかった。スタジアムの近くで散歩をしているおばさんに、
バスターミナルの場所を聞くと、歩いて行くには遠いらしい。
身振りで歩けるかを聞いたら、首を振ったのだ。

「遠い」というのは全くの個人の感覚なので、絶対的な距離を示す
ものではないが、初めての場所の場合はなるべく早い手段を
取った方がいいと思った。近くのバス停までスーツケースを牽く。
そこでスーツケースを持っていた事で韓国人のお兄さんに
親切にバスターミナル行きのバスを教えてもらえる事に。
だが好事魔多し、そのバスが一向にやって来ない。時間だけが過ぎる。
私は少し思案して、タクシーを呼ぶ事にした。
日本よりも韓国はタクシーが圧倒的に安いという事情もある
(韓国は夜間初乗り1800ウォン=220円)が、日中の様にバスで
逆方向に万が一向かってしまった時は、取り返しが付かない。
そのバス停は大通りに面しており、タクシーはすぐ捕まり、
一路バスターミナルへ。タクシーに15分も乗っただろうか。
約4000ウォン=480円でバスターミナルに到着。チップも不要だ。
実は帰りのバスは、出待ちやそういった一切のものが読めなかった
為に24時に昌原発の切符を到着時に買っていた。バスターミナルに
到着したのは10時30分過ぎ。逆に時間が余ってしまった。

近くにあるショッピングセンターによってみるが、この付近は
街灯も少なくて、浮浪者や黒人が徘徊していてあまり雰囲気は
良くはない。バックパック一つならいいが、それに加えて
スーツケースをガラガラと牽いている。
何度も彼らの前をウロウロするのは気分がいいものではない。
ショッピングセンターでも、24時間開店しているのは一部だった
ので、簡単に食事を取って結局バスターミナルで出発を待つ。
ソウルまでのバスは、自然と優等のバスが用意される。
日本では深夜バスは安いというイメージがあるが、韓国では
逆で夜のバスは高い。そして、その分だけ快適でもある。

ソウルから昌原へのバスは4列だったが、ソウルへの夜行バスは
座席が3列で、しかも1列の席が取れた。あまりに快適で
直ぐに眠ってしまった。朦朧とする意識の中で覚えているのは
バスターミナルから出た瞬間までだった。

そして、朝4時ソウルのバスターミナルに到着。地下鉄もまだ
始発すら動いていなかった。




