事があるだろうか。「インシデント」は直訳すると出来事や事故と
なるが、航空機事故の際の「インシデント」は「トラブル」的な
使われ方をする事が多い。
航空機でトラブルが発生した場合、事故調査委員会がその内容を
検討した上で、「重大インシデント」等に指定して、事故の原因を
調査する事になっている。
高い空を飛びながらいくつものインシデントが発生して、まさに
墜落事故を起こしそうな航空機とJ2降格が目の前にある横浜FCとがダブる。

しかし、この日の横浜は今までと違った姿が見えた。中盤の吉野と
パウロはコンビネーションが絶妙で、吉野がスペースを消す事で
パウロが前線からボールを追い続けられた。川崎の中盤を構成する
中村、谷口、大橋の3人をジュニーニョから遠ざけた事で、
前半からペースは横浜が作っていく。
3バック特有のサイドの裏のスペースにカタタウが走りこみ、
攻撃で先手を握るとそれに呼応し、三浦淳、三浦知も躍動する。

過去、横浜が川崎に唯一勝利した試合でも主導権を握る事はなかった。
2002年の等々力での信義のシュートも、有馬のゴールもカウンターで
抜け出してたのを決めたもので、支配できたとは言えなかったが
あの時よりも互角に戦っている今日の横浜FC。

前半中ごろまではいつも以上に希望が見えていたが、大きな
インシデントが横浜FCを、ゴールを直撃する。
それまでパウロとCBに挟まれてゲームをコントロールできなかった
川崎・ジュニーニョが先制ゴールを挙げたのだ。
CKのこぼれ球から、大橋がPA付近まで持ち込みシュート、このボールは
菅野が素晴らしい反応で弾き出したが、そこに詰めていた
ジュニーニョはほぼフリーで決めた。

まさに「事故」でも言うべき失点。確かにポジショニングを褒めるべき
だろうが、DFが重大なミスを犯した訳ではなかった。この事故の
様な失点を喫した事で、ここからは川崎がサイドで優勢になり
チャンスを作り始めた。
横浜は内田と三浦淳のポジションを入れ替えるなど工夫を凝らすが
殆ど効果はなかった。
後半横浜は、前半で負傷したカタタウに代えて西山を投入。
彼の投入でリズムが変ったとは感じなかったが、如何せん川崎の
調子が悪すぎた。押し込まれるとリスクを犯さずクリアするのが
一義的になり、それがまた押し込まれるという悪循環を
生んでしまっていた。

ただチャンスを作りつつもそれを決められないのが、今の横浜FC。
内田がカウンターで抜け出して中央へ折り返した絶好のパスも
三浦知が届かず、西山の左足から放った絶妙なミドルシュートも
川崎GK・川島が弾き出した。終了間際に内田が放ったFKも
ゴールバーに嫌われるインシデント発生。

結局0-1で川崎が逃げ切った。ACL敗退の精神的ショックや、
連戦をこなしてきた肉体的疲労もあったが、ジュニーニョの
一発で逃げ切った。これで8月以来の勝利となった。

横浜は、内容は良くなったがそれが勝利に結びつかなかった。
これで残りは6試合。全勝しても14位以下は確定した。
それどころか再び次節降格の危機が迫っている。
ここから残留するには、まさに「事故」を起こし続けなければ
ならなくなっている。本来は事故を起こさない為にインシデントを
検証するが、横浜FCは事故を起こす為にインシデントを検証
しなければならない。その翼を高く羽ばたかせる為に。



