観客の多くは家路に着いた。大井第二球技場が涼しく感じたのは
夕刻になり、潮風が涼しく感じたからだけではないだろう。
しかし、私は帰らなかった。それはこれからX3の試合が行われるからだ。

X3とはXリーグから見たら3部リーグで、決してレベルが高いリーグとは
言う事はできない。そもそもレベルの高いアメフトを見たければ
Xリーグなら上位同士の試合かNFLを見ていれば済む話である。
だが、私が残ってこの試合を見たいと思ったのは、レベルの高低を
超えて存在する、スポーツへの情熱がそこにあると思ったからだ。
Xリーグ上位のチームは企業チームであれば部活動としての優遇も
あるだろうし、クラブチームであってもスポンサーからの協力は
大きいものがある。X3で大きなバックアップもない中、仕事と
スポーツを両立していく事は、簡単ではない。
では、なぜ彼らはそこまでアメフトに向き合うのか。「好きだから」
全てをアメフトに懸ける情熱に帰結する気がしている。

その情熱は第4Q終盤、20-0でブルーサンダースがリードしている時でも
観客席に伝わってくる。主将#49茂在が「後1点、後1点取ろう」と
味方を最後の最後まで鼓舞し続けた。勝敗は殆ど見せたがそれは
どうしてか。20点以上の得失点差をつける重要性もあったが、
それ以上に、「遂行力」を備える必要性もあったと思う。
目標を持つこと、唱える事は誰にでも出来る。だがしかし、それを
遂行する能力がなければ目標は、他力本願な理想に過ぎない。
「する」「なる」ではなく、「できればいい」「なれたらいい」
それでは夢など叶わない。1つのタッチダウンは大きな目標では
ないが、その1つのTDが勝敗どころか競技人生を分ける事もある。
だから主将として、チームの遂行力を試す考えもあったのだろう。
自分達のすべき事を全てした上で、結果を待つ。人事を尽くして
天命を待つ、まさにそうした思いが彼の言葉から伝わってきた。
そして、チームもその言葉に引っ張られる様にTDを挙げて
26-0と勝利した。目標を立てるだけでなく、少なくとも目の前の
目標を遂行する力がある事は証明された。昇格したいという
言葉は絵空事ではなく本気であり、またその舞台に立つ資格も
身につけていた。

これで秋のレギュラーシーズンを終えたブルーサンダースは、
他チームの試合結果に順位決定を委ねられる事になった。
現在首位ではあるが、2位のハーバーズと4位のクーガーズが
それぞれ1試合残しているのでこの結果如何で順位が1位から
3位まで変動する。首位はX2の最下位と入れ替え戦に行けるが、
2.3位はそのプレーオフの勝者が入れ替え戦に向かう事になる。

今彼らに出来る事はやりきった。小さいミスはあったが
やれるだけの事は全て出し切った。
果たしてその思いは届くのだろうか。11月10日またこの
大井第二球技場で各々の運命を決める試合が行われる。
試合終了間際に貰ったQBサックが不吉な前途の予兆でなければ
いいのだが。



