それはサイドラインに三浦知が立っていた事ではない。交代する
選手が、横浜FC唯一の得点源であるアンデルソンだったからだ。
「御給の下でカズ選手を中盤を厚くするため」と都並監督が語った様に
彼らを縦の関係で並べ、中盤を押し上げたいという意図があったのは
理解できるが、肝心の御給がこの試合鳥栖の速いプレスの前に
全く自分のプレーが出来ずペースを奪い返せない。
横浜に流れが来たのは、サイドで突破を繰り返したヨンチョルが投入
されてからとは「後半15分過ぎからペースアップをして勝負を掛けて
いきたい」という監督の言葉に対する皮肉だった。

そもそもここ数年伝統的に受け継がれる鳥栖の積極的なプレスの前に
横浜は前半から苦戦を強いられた。松本氏から岸野氏に監督が
代わっても、このベースとなる戦術は変わる事なく存在し、横浜は
ボールをキープする事もままならなかった。
「構えて後ろのスペースをなくしてから守ろう」(中田洋)、
「ディフェンスに人数を掛けていたところもあるので、前に出て行く
パワーが足りなかった」(山田)と、ホームでありながら守備的に
入った事で前と後ろが間延びし、頼みのアンデルソンはロングボールに
反応するが、前線で孤立するシーンが多くチャンスらしいチャンスは
皆無に等しかった。

前線に蹴っては潰されてカウンターを受け続けていた横浜が助かった
のは、鳥栖の決定力のなさだろう。鳥栖・FW金は荒削りなプレーが
特徴的だが、裏を返すとやや雑な面も多く歓声の次には大きなため息が
出るシーンも少なくなかった。
後半鳥栖が積極的になったというよりは、横浜の消耗が激しく
自然と鳥栖がボールを回せる時間が増えた。それを打開する為の
三浦知の出場だったが、彼がボールを持って前を向く事も少なく
ゲームに絡んでいたとは言えなかった。
中盤でバランスを取るはずだった山田も終盤までDFラインに
埋没したまましており、そもそものゲームプランが悪かった。

積極的にプレスにくるチームをどう叩くか。都並監督は守備的に
入って、長いボールから御給のポストプレーとアンデルソンの
決定力に賭ける戦術に出たが、これは完全な失敗に終わった。
ヨンチョルの投入は、DFラインの裏やサイドのスペースを突く事で
チャンスを見出すもので、これには成功した。だが、今度は
1トップでサイドに展開した彼をフォローする選手、早い
タイミング中で待つ選手がおらず、結局彼も孤立するだけだった。
「都並には戦術がない」と仙台のサポーターから聞いた事があるが
どうやらそれはこういう意味だったのだろうと、湘南戦・鳥栖戦と
見て何となく合点のいくところがあった。言葉で表現するのは
難しいが、自分のプランを当日の選手の調子や流れに構わず遂行
するタイプと言えばいいのだろうか。それと、小さい事に敏感に
なっているところもあるだろう。大局観を持っていたなら
アンデルソンの交代はありえない。

彼への評価は、タイムアップの笛の後の静寂が物語る。暑さ寒さも
彼岸まで。春の彼岸を過ぎてこれから暖かくなるどころか、
季節とは裏腹に、2位という日の目を見られる順位がこれが最後で
はないかという不安さえ脳裏を過ぎる試合になってしまった。



