失点して横浜は慌ててるのか相手からボールを奪うと、相手のサイドの裏のスペースにボールを付ける。試合開始から10分程度しか経っていないのに、試合終了残り15分くらいの進め方をしている。中田監督、タヴァレス監督のどちらが正しいというよりも、やや急ぎすぎている。失点したシーンのように、相手の高い位置からのプレッシャーを掻い潜るには、短くコンパクトなサッカーを止めてさっさと放り込む方が戦術的な浸透度は高くなるとは言え。
と考えていたら前半で京都のハソンミンが退場して横浜は数的有利になった。京都は4-4-1のシステムで低めにラインを形成して、守備的になってから横浜はスペースがないので中盤でボールを回して攻略を探った。するとタヴァレス監督は野村を下げて大久保を投入。高さのある大久保を入れて、雨の中でロングボールを使いながら京都を押し込みたいのだろう。
野村にとっては非常に悔しい決断となったが、何しろ残り4試合勝たないといけない。起用される選手が活躍してプレーオフに滑り込むしかない。野村も唇をグッと噛みしめて引き上げていく。控えの選手が彼を抱きしめる。選手も勝ちたい、サポーターも勝ちたい、クラブも勝ちたい、監督も勝ちたい。でもフィールドには11人しか立てない。誰かが出れば誰かが下がるしかないのだ。
横浜は前半37分、レアンドロ・ドミンゲスのコーナーキックをイバがヘディングで流し込み同点に。大久保にマークが集まったのか、イバはほぼフリーな形で不得意な頭で合わせた。横浜は数的優位のままで後半に挑む。攻める横浜、耐える京都の構図のまま時間は過ぎていく。
ただ、荒れた西京極のフィールドの状況と台風の影響で降る雨で横浜は良いリズムでゲームをコントロールできない。弱いパスはプレスの餌食になり、強いパスは受け手の頭を超えていく。押してはいるが決め手がない。後半20分イバがその停滞した空気をぶち破る。中央でボールを受けるとプレッシャーがほぼない状態で左足を振り抜くと京都GK清水が反応できないスピードでゴールを貫いた。
逆転した横浜は、ジョンに代えて野崎を入れて中盤の運動量を維持しようとする。投入当初は、中央の位置にしてインサイドハーフとして野崎を使って面白い形だったが、レアンドロドミンゲスに言われてサイドに位置してから消えてしまった。
後半28分の自陣深くでFKを与えると、京都・石櫃の蹴ったボールを小宮山が触れて自陣に転がってしまった。一人少ない相手に失点するとしたら、セットプレーかカウンターという教科書通りの失点を喫してしまう。
残り約20分、横浜は攻めに攻めたがゴールは遠かった。戦闘にぬるま湯などいらないはずなのだが、西京極のぬるま湯に浸かってしまった。ミスも多かったし、トライをしない選手もいた。無論、90分の中で出来る事は限られているが、限られているからこそやらないで後悔するなら、トライして結果が出ない方が遥かに良い。
はリードを守り切れず追いつかれて勝ち点を失っている。昇格プレーオフには残り3試合で勝ち点5を追いかけなければならない。ほぼ絶望に近い。近いけど可能性がある限り戦う。
タオルを入れるなと銭湯の壁に書かれていた。そう、横浜もタオルなど入れるな。自分達で終わりを選ぶ事などしない。戦いはまだ終わらせない。朝風呂でもう一度気持ちを入れ替えた。