その2試合、前半開始5分と経たないうちに失点し、自分たちの首を絞めていたが、この日は逆に横浜のゴールでゲームの口火を切った。野村の左サイドからのシュートはクロスバーに弾かれるが、ジョンがそこに詰めてシュート。これを熊本GK・畑にセーブされるが、その跳ね返りを再び押し込んでゴールを挙げた。決して奇麗なゴールではなかったけど、コースが見えたらシュートを決める意識があって、それが決まらなくても決まるまで押し込む強い意識が先制弾を生んだ。
そこから横浜は耐える時間が続く。中里の警告の累積による欠場でポジションを得たのはゴルゴこと石井。今シーズン、初出場かつ初先発。ポジション取りが曖昧だった。本来ならアンカータイプの石井を底に起きたいが、この状況でそれは苦しいので佐藤が意識して彼をケアするとどうしても中盤2枚が並びスペースを与える苦しいサッカーとなった。
エクスキューズとして、このガチガチのスタメンとコンビネーションは今週になるまでほぼない、練習試合しか出てないゲーム勘と問題はあるが、そうもいってられない。ボールを奪う瞬間はよい、奪うところのコンビネーションや奪った後の前へボールを付ける意識に課題が多かった。技術はあってパスミスは少ないが、裏返すと脅威となるパスは出てこなかった。
バイタルエリアに侵入を許すと、前線と距離が出来てボールを収めるのが難しくなる。佐藤は懸命にバランスを取ろうと中盤を孤軍奮闘するが、それが相手にスペースを与える悪循環があった。
一方を食いつかされて、逆サイドからのクロスから何度もピンチを迎えたが熊本のミスに救われてゴールを奪われなかった。
この苦しい展開を楽にしたのは、得点王の一撃。コーナーキックをイバがヘディングであわせて2-0。1点差では苦しいゲームを2点差としてゲームは後半に。前からプレッシャーにくる熊本に合わせて、ブロックを低いところで組み横浜がカウンター気味にレアンドロにボールを預けてオープンスペースに展開して熊本に主導権を握らせない。
タヴァレス監督は、藤井を田所に代えて左サイドで起用。その後、藤井を通常の右サイドに入れて新井を左に。正直采配はミスだった。ここがバタバタしたのは田所の問題ではなかったはずだ。どうしても石井を経由するのに戸惑いがあるので、ここを使わず縦にいこうとすると動く範囲が広くなってしまう。良く言えば、悪いと監督が判断すれば先に手を打とうという姿勢は、中田監督にはなかった。引っ張って悪くなるなら、先に代えて動かす方がまだマシと考えているのだろう。
熊本はグスタボが入って前線の強度が増してから横浜は中々チャンスを作れず、逆にペナルティエリアすぐ外からのFKを与えるなどピンチもあったが、熊本・安のキックはGK高丘のビッグセーブでこれを許さず。
結局アディショナルタイム4分を含めて横浜は約2ヶ月ぶりの無失点勝利を挙げた。9月24日以来の勝利の美酒。もう振り返っても過去は変えられない。結果を憂いても中田前監督は戻ってこない。ここにいるのはタヴァレス監督である。残り2試合。追いかける身にとっては、自分たちが勝利挙げた上で上位が転ぶのを拝むしかない。自分たちが勝利を挙げるかどうかは、自分たちの手に掛かっている。これはどのチームも同じ。可能性がある限り戦うはず。諦めたところから落ちていく。横浜FCの歴史で諦めたことなど一度もないはずだ。諦めが悪いのがこのクラブの最大の力なのかも知れない。