ところが、この日はチーム全体に精彩がない。1トップの皆川は左右のスペースで受ける動きが少なくボールが収まらない。松浦と手塚は味方を追い越す動きもない。横浜の攻撃面での課題は、こうしたスペースでボールを受ける動きが少ない事。ウィングバックに入ったマギーニョ、松尾は常に相手と対面するばかりで中々前を向いて仕掛けることもままならない。こうしたところで手塚が松尾を追い越してスペースを作る様なプレーもない。気の利いたプレーは出来ていても、相手からすると脅威になるプレーは少ない。
1ボランチの脇は横浜の弱点でもある。それを相手も理解している。前半22分の失点は、田代がボランチの脇を締めようとつり出された裏のスペースを狙われ、走り込んだ森島が追いすがった佐藤を振り切ってゴールを決めたもの。田代が高く出ていくのは適切だったのか、松浦は2トップの様なところまで出ていく必要はあったのか、そうするとラインコントロールは適切だったのか。色々不可解な失点だった。
では、失点して攻撃が加速するか言えばそうでもなかった。広島の前線からのプレスにボールを何度も失い、横浜は攻撃の形すら作れない。システムを5-4-1の様な形にして広島の攻撃を抑え込んだ半面、選手の距離感が悪くなり後ろからボールを持ちあがる事も減った。だから何となくロングボールで打開を図るが、サイドの選手へのサポートも遅く広島は十分にブロックを作る余裕があった。
前半37分には広島に追加点。コーナーキックのこぼれ球をフリーになっていたドウグラス・ヴィエイラに決められた。2018年のJ1参入プレーオフで失点してから、これで三ツ沢では3試合連続彼にゴールを許している。J1で再会しても、相性の悪さがあるのだろうか。あの1戦以降横浜は彼にとってお得意様になってしまった。
後半下平監督は選手を一気に3人交代。4-4-2にしてサイドを高く保ちながら、中盤にスペースを自分達で作って、そこから反撃を開始した。4バックになってドウグラス・ヴィエイラを2人で見る事がはっきりし、中盤の手塚と瀬古は運動量を高めながらゲームメイクしないといけないとはっきりした。相手にブロックを作られた時に、2トップに両ウィングバックに、2インサイドハーフがボールを待っているのが効率的ではなかった。後半はこれにより幾分持ち直した感があった。
そしてレアンドロ・ドミンゲスの投入は、現在の下平監督が目指しているサッカーに一番欠けているスペースに侵入するということを体現。ハーフスペースの使い方が抜群に上手いので、彼からのチャンスメイクは幾度となくあった。広島の城福監督も「レアンドロ・ドミンゲスを背中で見ろ」と指示を出す位、前線で神出鬼没なレアンドロを広島は中々つかみきれなかった。
彼の登場もあり、一時的に横浜にチャンスが増えたが、広島の集中力は途切れる事なく横浜はゴールを奪えず0-2で終了。良いサッカーと言われているがこれで4連敗である。勝てないだけならまだしも、ここ3戦はゴールもゼロ。再現性のある攻撃の形も生まれていない。ボールを繋ぐ事が手段化しつつあるのも気になる。これで17位に後退。失点を繰り返しゴールが奪えないサッカーが良いサッカーと言えるのだろうか。浮上の際会はどこにあるのだろうか。最下位が目前にある結果では、良いサッカーとは庇う言葉ではなく皮肉にしかならない。